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2023.10.18
【翻訳】マリ·クレールBIFF特別版表紙の主人公、俳優イ·ビョンホンのグラビアとインタビュー

(※【ネタバレあり】このインタビュー記事には映画のストーリーに関する内容が含まれています。)

俳優イ·ビョンホンのグラビアとインタビュー
この30年間、自分を乗り越えてきた者が迎えた新しい頂点で。
作品ごとに更新される俳優イ·ビョンホンというクライマックス。



ブラックタートルネックセーター:ラルフローレンパープルラベル(Ralph Lauren Purple Label)、ブラックパンツ:トムフォード(Tom Ford)、ダブルブレストコート:ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)、ブラックブーツ:カルミナ(Carmina)


シャツ・タイ・パンツ・コート:バレンティーノ(Valentino)

■毎年晩夏になると現場で会う映画関係者やマネジメント関係者たちが「マリ・クレールBIFF特別版」の表紙を飾る俳優が誰なのか尋ねてきます。今年は俳優のイ·ビョンホンと言ったらみんな納得しました。表紙を飾ることに異論のない俳優。まさに今夏、劇場街を平定しました。
そうでしたか?(笑)個人としてはありがたいし、幸せなことです。一方で気楽に喜べない気持ちもあります。私だけではなく、おそらく今多くの映画関係者が感じているはずですが、コロナ禍を経験して劇場を訪れる観客自体が大幅に減りました。『犯罪都市3』が1千万観客を動員した時、状況が回復したと思いましたが…。製作者や作品関係者たちはもちろんですが、実はすべての映画関係者が推移を見守りながら残念がっている状況です。

■そんな中、映画『コンクリート·ユートピア』はトロント国際映画祭をはじめシカゴ国際映画祭、ファンタスティック·ペスト、チューリッヒ映画祭など海外有数の映画祭に相次いで招待されています。今朝トロントから帰国されたと聞きました。これまで数多くの海外映画祭に参加されましたが、俳優にとって映画祭は依然としてときめく場所なのでしょうか?
とてもわくわくします。映画製作に入ると、撮影から広報まで長い過程が辛く、観客が映画をどのように受け取るか気になります。そんな中、映画祭に招待される瞬間は、まるでボーナスみたいなご褒美のように感じられます。振り返ってみると、映画『マグニフィセントセブン』でトロント国際映画祭に行ったのが7年前でした。映画『THE GOOD THE BAD THE WEIRD(いい奴悪い奴変な奴)』でもトロントに行きましたが、それは言葉では言い表せないほど以前のことなので(笑)、今年改めて感じたのですが、特定の人種に関係なく、世界の人々がみんな韓国の俳優たちの名前を叫んで歓声をあげていました。Kコンテンツが私たちが思っている以上に世界各国の人々に愛されているということを肌で感じました。

■韓国の俳優やスタッフが海外の現場で活躍して認められることが当たり前になりましたが、15年前の『G.I.ジョー』でハリウッドに進出した先駆者俳優として感慨深いのではないでしょうか。
その時は島のように一人で浮かんでいるような寂しさを感じました。でも、今は誰でも知っているような雰囲気です。気楽に楽しんで帰ってきました。


ホワイトラウンドネックTシャツ:プラダ(Prada)、サン:グラスレイバン(Ray-Ban)


ホワイトラウンドネックTシャツ:プラダ(Prada)、ブラックパンツ:トムフォード(Tom Ford)、レザージャケット:バレンティーノ(Valentino)

■今年「ヨンタク」に出会って俳優としてまた人生一のキャラクターを更新されました。オム·テファ監督によると、ヨンタクというキャラクターは直線に伸びた人物でしたが、イ·ビョンホンが変奏して立体感を付与したと話していました。
小さなアイデアを基に監督と相談しながら作り上げていきました。最初からヨンタクが興味深かったのは、すべてを失い、これ以上生きていく理由がない人物にある瞬間、自分の意志とは関係なく大きな権力が与えられ、変わっていくという映画的な状況のためでした。
善人なのか悪人なのか見分けがつかない人物ですよね。少なくともヨンタクは権力を握った時、個人的な欲望や利益のために動かないという点で悪人とは見られない曖昧な一面があります。私たちの周りにもよくいそうな人物だと思いました。そして、この映画はヨンタクだけではなく、キャラクターごとに感情移入が可能な映画だと思います。このアパートに住む人々、さらに外部の人たちまで「ああいう人は自分の周りにもいる」と思い出しそうな人たちが皆集まっています。ですからより現実的ですね。

■役作りをしながら監督とどんな話をされましたか?
住民投票後に署名で名前を書くのですが、その時に「ᄆ」の字を最初に書くシーンが好きです。これまで「モ・セボム(모세범)」という名前で生きてきたから無意識に「ᄆ」を使うんじゃないかな?署名するシーンのクローズアップショットが現場で作られました。でも観客で気づいた方は多くなかった。ある意味、そのシーンで全て気づかれなかったのが幸いでもあります。

■印象的な手がかりの一つはキム·ソンヨンさんが演じたアパート婦女会長「クムエ」が「牧師も殺人者も皆同等だ。すべてリセットされた」と言ったとき、しばらくヨンタクにフォーカスが合うところです。最初に見たときは気に留めませんでしたが、最後まで見ると思い返されるシーンでした。このような手がかりになるシーンが繰り返され、作品を見る楽しさが倍増しました。
そのシーンも現場で議論の末に誕生しました。私が一番悩んだ部分とつながっているシーンです。ヨンタクが殺人を犯して地震が起きた後「生きていても仕方がない」と茫然自失となっていましたが、外の"ポン"という音を聞いて思わず飛び出して火を消します。家に病的に執着する人物です。反射的に飛び込んで火を消すと一瞬で英雄に、住民代表になっていました。その状況に混乱しただろうと思います。そんな彼に何らかの刺激が必要だったのではないかと思いました。犯してしまった殺人が何でもないことになるくらいの刺激が何なのか、監督と相談して出てきたのがソンヨンさんの台詞です。しかし、過度に意味を与えすぎないようにフォーカスだけしばらく合わせて外す程度にしました。そのような小さな事柄を加えながら作り上げていきました。


ホワイトラウンドネックTシャツ:プラダ(Prada)、ブラックパンツ:トムフォード(Tom Ford)、レザージャケット:バレンティーノ(Valentino)

■ヨンタクの絶頂は「アパート」を歌う場面ではないでしょうか。イ·ビョンホンという俳優は、どの作品も、どのシーンも思い切り演じ、物語の中にどっぷりとはまって生きています。30年以上の間、無邪気に俳優の仕事を愛しているという印象を与えます。秘訣は何でしょう?
長く演技をしていると、ある人物やシーンで「あ、これかな?」と反射的に以前の演技を取り出して使う場合があります。なので習慣のように演技することを最も警戒し拒否しています。まるで自分が初めてその感情を受け入れるように、初めて演技するかのように臨みます。無意識のうちに積もったものを意識的に払い落とそうとするんです。「どうすればいいか、全部知ってる」と自分の引き出しから取り出すのではなく。

■わざわざ取り出そうとしなくても簡単に掴めてしまうくらい、多くの作品に出演されているので、それを避けることも難しいのでは?
そんなふうに惰性で演技をした瞬間、私はその場で止まってしまうと思います。不思議なのは、努力しなくても新しい心が自然に生まれることもあるという事実です。慣れたやり方を選ぼうとする時、突然びっくりするんです。「なんでこうしてるんだっけ?」と。なので演技は毎回難しいです。さらには演技をすること自体が未熟でぎこちなく感じるときもあります。これどうやるんだっけ?どう表現すればいいんだろう?と。

■どうしたら良いかわからなくなるということですか? 俳優イ·ビョンホンが?
長い間一つのものを作ってきた職人の習慣みたいなものが出てくることがあります。知らないうちにたまったノウハウでしょう。でも、演技というものは技術職ではないですよね。少なくとも一人の人間の感情を表現するということは、私がその人物になって生きるということですが、それは技術のように鍛えられるものではありません。だから「これどうやったっけ?どうすればいいんだろう?」と、少しですが、このような気がして先が見えないような瞬間に直面する時があります。完全に無の状態に戻ったような。水泳選手やテコンドー選手なら体や筋肉が覚えていてすぐ対応できると思いますが、一人の人生を新しく表現するということは本質が違います。それで戸惑う時があります。幸い、その戸惑いは長く続きませんが。


映画『コンクリート・ユートピア』は2024年1月5日に日本で公開されます。
引き続き、イ・ビョンホンへのあたたかいご声援をよろしくお願い申し上げます。