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2023.09.20
【翻訳】「女性朝鮮」インタビュー イ・ビョンホンの進化

フォーブス(Forbes)2023年トロント国際映画祭の期待作10選に選ばれ注目度を高めた映画『コンクリート・ユートピア』が、現地時間10日午後5時、トロント国際映画祭ガラプレミア上映を成功裏に終えました。イ·ビョンホンはガラプレミア上映に先立って行われたレッドカーペットイベントに、オム·テファ監督をはじめ、パク·ソジュン、パク·ボヨン、パク·ジフらと参加し、取材陣とファンの熱い関心を受けました。



「うわぁ、面白そう!」

『コンクリート・ユートピア』のシナリオを受け取る前、「大きな災難で世界が廃墟となってしまった中、一つだけ残ったマンション」というオム·テファ監督の言葉にイ·ビョンホンが見せた反応です。シナリオはまだ多くの可能性が開かれている興味深い状態で、どのような物語が続いていくのか気になり、好感を持ったといいます。

「実際にシナリオを読んだ時はさらに興味を持ちました。絶対的な善悪があるわけではなく、極端な状況下で人間は常識に基づいて規則を決めますが、その中で葛藤が生じ人間性の底が見えるという事実が面白かったです。」
『コンクリート・ユートピア』は災難映画だと言われていますが、イ·ビョンホンは人間が災難よりも怖いという事実が興味深いと話しました。そして、その興味をきっかけに、大震災後、皇居アパートの入居者代表キム·ヨンタクというキャラクターを受け入れました。


■今まで見たことのないイ·ビョンホンでした。見た目もがらりと変わりましたね。
扮装チームと作っていきました。最初に「頭が太く硬い人なら面白そう」という意見が出たのでやってみました。次に、少しM字型脱毛症を見せてみたらどうかというアイデアが出て、試してみたら全く新しく感じられる顔になりました。ヨンタクがどうであるべきかという正解はありませんが、(そのような外見で)ヨンタクを表すものを見つけていったような気がします。

■崩れた外見をファンに見られるのは?
ファンが嫌がるのではないかと心配ではありますが、それよりもキャラクターを作ることが重要だと思いました。



■ヨンタクというキャラクターがイ·ビョンホンと出会い、立体的に変わったと聞きました。
ヨンタクは極端に変わった人物ではなかったと思います。常識の中にいる普通の人なのに、ただ敗者で憂鬱。自分の家を持つというのが人生の目標でしたが、それさえも詐欺に遭い、あまりにも憂鬱で絶望的な状況に苦しんでいました。そんなふうに落ち込んでいた小市民が極端な状況に置かれ、予想外に変わっていく過程が面白いのではないかと思い、平凡な人物に近い形で描かれています。シナリオを読んで雰囲気を考えました。

■ヨンタクという人物を理解できましたか?キャラクターをどう受け止めているのでしょう。
まず自分自身が納得してこそ演技ができるので、納得するまでに時間がかかったシーンは少しありました。例えば消火栓の前で叫びながら叩くシーンでは監督から呪文を覚えてほしいと言われました。どういうセリフなのか理解はできそうなのに、表現ができなくて時間がかかりましたね。切実さが感じられるにはどんな声を出せばいいんだろうとたくさん考えました。

■大衆歌謡「アパート」を歌う場面が圧巻でした。イ・ビョンホンの突飛ながらも新しい一面が見れましたね。
表情はそれこそ後で、モニターを見て初めてわかるので、コンテのシーケンスに従って演技しました。村の祭りに人々が楽しく酔った状態で遊んで、一曲歌えという言葉におじさんダンスを踊りながら楽しく歌うシーンでした。演技をしていると、いつもすべてが不安になります。完成品が私たちが意図したことを100%伝えることが出来たのかという疑いも常にあります。私が感じる情緒を観客も感じるだろうという確信を持つように努めています。自信はありませんが、人間は普遍的な情緒を持っているため、そのように信じようと努力します。

■猛暑の中での撮影だったそうですね。 ビハインドストーリーも多そうです。
モニター室にはエアコンをつけておいてよくモニターをしに行きました。気にならないのに「監督!」って言いながら(笑)

■初めて作業したオム·テファ監督との相性はどうでしたか?
ディレクションをあまりくれなかったです。 すごく困ったというか…(笑)わざとたくさん話しかけました。 「監督、ここで表現したいことは何ですか?このセリフの意図はこうでしょうか?」などと言いながらたくさん話しかけているうちに、考えていることを言ってくれるようになりました。いろいろとやり取りしながら、その中で新しいものを発見して作っていきました。監督は自分なりのルールと考え方がはっきりしている方で、思わぬ奇抜さがありましたね。




■映画の中の状況が実際に起こったら?
キャラクターを引き受ける度に「自分と似ているかもしれない」とか「自分もこんな風に言いそうだ」という共通項が少しずつあります。結局のところ、自分が演技をしなければならないので、キャラクターに浸るためには理解し同調しなければなりません。ところがヨンタクは本当に自分とは違う気がしました。長い間をかけて理解し近づこうとしたので、今はそうでもないですが、初めてシナリオを読んだ時は、ヨンタクは本当になじみのない人物でした。極端な行動をするシーンを説得力を持って表現するまで時間がかかりました。悔しさと憤慨、理性がかき消されてしまうほどの怒りだと思いながら、自分を説得させました。

■自分の演技に納得いかなかったところはありますか?
少しずつですが色々な部分であります。昔は小さなことで一喜一憂していましたが、今は全体の流れに大きく作用しない限り満足していますね。ガッツポーズをするくらい満足しているわけではないですが、だからといって地面を叩きながら嘆くほどでもありません。

■今回の作品を通して、演技の快感と楽しさを感じたシーンは?
一番感じたのは、自分の名前を書くシーンを撮影する時でした。名前の一部の文字を書いたシーンがクローズアップされたのですが、元の名前を書いていた習慣を表現したシーンです。

■イ・ビョンホンの数多くのフィルモグラフィーのうち、この映画はどんな作品と言えるでしょうか。
いつも心の中で悩みながら苦労して撮影した作品ありますし、多くの方に愛される作品もあります。この映画は初めてシナリオを読んだ時、わくわくしました。撮影も楽しかったし、完成したものも気に入っている作品です。久しぶりにブラックコメディの魅力も感じました。この映画は観る人によって意見も感情移入の仕方も異なると思います。


映画『コンクリート・ユートピア』は2024年1月5日に日本で公開されます。
引き続き、イ・ビョンホンへのあたたかいご声援をよろしくお願い申し上げます。